災害に向けたトイレットペーパーの備え方

災害に向けたトイレットペーパーの備え方

 

災害が発生した際に、私たちが真っ先に必要とするのは食料や飲料水だけではありません。
意外にもトイレットペーパーのないことが深刻な問題となることがあります。

その理由は、トイレットペーパーは、災害発生時には買い占めが起こり、品不足になりやすい商品だからです。1995年の阪神淡路大震災や、2011年の東日本大震災が発生した際、被災者が困ったものは、食料や飲料とならんでトイレットペーパーであったとも言われています。

今回は、防災目的の備蓄用トイレットペーパーの必要性と備蓄方法、避難時の使い方などについて紹介していきます。

  

 

おすすめの防災目的の備蓄用トイレットペーパー

防災目的の備蓄用トイレットペーパーを用意するにあたり、以下の2つの商品がおすすめとして挙げられます。

 ・アルミパウチの長期保存トイレットペーパー
 ・長巻きトイレットペーパー

それぞれの商品について詳しく見ていきましょう。

 

アルミパウチの長期保存トイレットペーパー

アルミパウチで真空パックされたトイレットペーパーは、湿気、カビ、害虫、ウイルスなどから守ることができるため、通常のトイレットペーパーよりも長期間保存できます。

商品ごとに推奨している保存期間は異なりますが、5年〜10年ほど保管できるとうたわれているものが多いです。

 

長巻きトイレットペーパー

長巻きタイプのトイレットペーパーは、通常のトイレットペーパーよりも長い紙が巻かれているため、1ロールあたりの使用可能な紙の量が多いのが特徴です。通常のトイレットペーパーは1ロールの紙の長さが50mですが、長巻きタイプは1ロールあたり100m~250mと2~5倍の長さが巻かれています。

後ほど詳しくご紹介しますが、湯浅紙店独自の調査結果で、長巻きだから利用者がたくさんの紙を使うということはありません。概ね通常のトイレットペーパーと同じ量が使用されるため、長く巻いているほど1ロールで長持ちすると考えて良いでしょう。しかも、長巻きであっても、通常のトイレットペーパーと1ロールのサイズはほとんど変わりません。

防災用として備蓄する際には、1ロールで長持ちすることと、コンパクトさから、250mの長巻きをおすすめします。

 

 

防災のために備蓄するにはトイレットペーパーはどれくらい必要?

防災時に必要となるトイレットペーパーの備蓄量を考える際、以下の4つのポイントを押さえておきましょう。

 ・家庭の人数
 ・1人あたりの平均使用量
 ・1日のトイレットペーパー使用回数
 ・最低限備蓄すべき期間(3日〜1週間)

過去に掲載した『トイレットペーパー1ロールを平均何日で使い切るのか?男女の差や家族構成、会社内での使用量を解説』では、以下のように定義しています。

 

 性別 1人あたりの平均使用量 1日のトイレットペーパー使用回数
男性 1.37m 1回
女性 1.14m 6回

上記を踏まえて、家族4人(男2人、女2人)が50mトイレットペーパーと250mトイレットペーパーをそれぞれ利用した場合、以下のように備蓄量を計算できます。

家族4人(男2人、女2人)のトイレットペーパーの必要量
 ・1日の総使用量:約16.42m
 ・3日間の備蓄量:約49.26m
 ・1週間の備蓄量:約114.94m

トイレットペーパーのロールが50mと250mの場合、以下のように算出可能です。

 ロール(m) 3日間の備蓄に必要なロール数 1週間の備蓄に必要なロール数
50m 1ロール(49.26/50) 3ロール(114.94/50)
250m 1ロール(49.26/250) 1ロール(114.94/250)


これを見てわかりますが、250mのトイレットペーパーは家族4人が1週間使っても半分もなくならないということです。250mを使い切るには16日かかる計算となるので、2週間以上交換の必要がないことがわかります。

災害の規模にもよりますが、2週間経過すれば物理的にトイレットペーパーを入手したり、トイレットペーパーのことを考える心のゆとりも出てくる人が多いのではと思います。
防災バッグを準備されている家庭や企業も多いと思うので、その中に「250mのトイレットペーパーを1ロール入れておく」というのは有効な対策となりそうです。

トイレを使う人数や男女比によって必要な備蓄数は変わりますので、どれくらい備蓄が必要かを計算しておくことが重要です。ただ、細かく考えるのがめんどくさいと思う方は、250mを1ロール確保しておく、という対策はそれなりに有効だと思います。

  

トイレットペーパー使用期限はいつまで?

紙製品を扱う大手企業の情報によると、トイレットペーパーやティッシュなどには使用期限を設けていないため、日数が経過しても問題なく使用できるとされています。このため、トイレットペーパーのパッケージには使用期限が記載されていません。

ただし、紙はにおいや湿気を吸着する性質を持っています。このため、保管している場所のにおいが移ってしまったり、カビや紙のやわらかさが失われて品質を担保できなくなる恐れがあるため、保管場所には注意が必要となります。

 

 

避難時のトイレットペーパーの持ち出し方

避難時にトイレットペーパーを持ち出す際には、いくつかのポイントを押さえておくことが重要です。

具体的には、以下が挙げられます。

 ・圧縮して持ち運びやすくする
 ・必要最小限の量を持ち出す
 ・防水対策をする

それぞれのポイントについて詳しく見ていきましょう。

 

圧縮して持ち運びやすくする

避難時には、トイレットペーパーをできるだけコンパクトにすることが重要です。

トイレットペーパーのロールはそのままではかさばるため、市販の圧縮袋を使用して体積を減らすことで、他の必要物資も一緒に持ち運びやすくできます。また、ロールの芯を取り除いてペーパーを折りたたみ、小さなジップロックバッグに入れることで、スペースを有効活用しつつ必要な量を確保することが可能です。

ただし、トイレットペーパーを圧縮すると芯がつぶれる可能性があります。芯がつぶれてしまうとホルダーへのセットが難しくなり、使うのが手間になってしまうので、芯がつぶれない範囲での圧縮にとどめてください。

 

必要最小限の量を持ち出す

避難時には限られたスペースと重量を考慮し、必要最小限の量に抑えることがポイントです。家族の人数や避難する期間、1人あたりのトイレットペーパー使用量を考えて持ち出すのが良いでしょう。不必要な量を持ち運んでしまうと、他に必要な物資のスペースを奪ってしまいかねないため、効率的に荷物をまとめることが重要です。

 

防水対策をする

トイレットペーパーは湿気や水に弱いため、災害の内容は避難状況によっては防水対策がされているとより良いでしょう。防水性のあるジップバッグや防水袋に入れて持ち運ぶことで、雨や湿気から守ることができます。万が一の水没や豪雨に備えるのであれば、複数の防水バッグに小分けしておくことも有効といえるでしょう。

ただし、よほどの状況でなければ、1ロールを個包装している紙やフィルムでも簡単な湿気や水分からトイレットペーパーを守ってくれますので、あまり神経質にならなくて良いでしょう。

 

 

災害時のトイレットペーパーの活用方法

 トイレットペーパーはトイレ以外でも、多目的に活用できる重要なアイテムとなります。


具体的には以下の3つが挙げられます。

 ・手拭きや汚れの拭き取り
 ・鼻をかむ
 ・怪我の応急処置
 ・燃料としての利用
 ・簡易マスクとしての利用

それぞれの活用方法について詳しく見ていきましょう。

 

手拭きや汚れのふき取り

手を拭いたり、ものについた汚れを拭き取ったりできます。トイレットペーパーは強度は高くありませんが、ちょっとした拭き取りには活用できます。ただし、トイレットペーパーはティッシュペーパーやペーパータオルとは異なり水に溶けますので、水分の拭き取りにはあまり適していません。

 

鼻をかむ

トイレットペーパーはティッシュペーパーとしても使えますので、鼻をかむという用途でも活用できます。ただし、ティッシュペーパーほど肌触りがやわらかではないので、繰り返し鼻を咬むと鼻まわりが赤く荒れてしまいがちです。また、トイレットペーパーは水に溶けるので鼻水の水分でもしなっとなりますので、少し多めに使うのがよいと思います。
あくまで、ティッシュペーパーがない非常時に使うというのが良いでしょう。

 

怪我の応急処置

災害時には怪我をするリスクが高まり、医療品が手に入りにくい状況では、トイレットペーパーが応急処置に役立ちます。

出血を抑えるための圧迫材として利用したり、清潔なトイレットペーパーを数枚重ねて傷口を覆い、テープや布で固定してガーゼ代わりにすることもできます。

ただし、この方法は一時的な処置に過ぎないため、できるだけ早く適切な処置を受けることが重要です。

 

燃料としての利用

火を起こす際に乾いたトイレットペーパーは簡易的な燃料として利用できます。

トイレットペーパーを丸め、小枝や枯れ葉と一緒に使用することで、火を起こす際の助けとなります。

 

簡易マスクとしての利用

トイレットペーパーを何層か重ね、簡易的なマスクとして利用できます。

数枚のトイレットペーパーを重ねて鼻と口を覆い、耳にかけるゴム紐や布で固定することで、埃や煙などから一時的に口や鼻を保護することが可能です。

ただし、医療用マスクほどの効果は期待できないため、あくまで応急措置として利用するのがよいでしょう。

 

 

まとめ

災害時には、生活必需品の確保が困難になることが多々あります。その中でもトイレットペーパーは、なかなか意識がいきにくいものです。その一方で、災害時は不足しやすく、困ってしまう可能性が高いものとなります。

非常時に備えて、長巻きトイレットペーパーや長期保存可能なアルミパッケージのトイレットペーパーを備蓄することで、いざというときに安心できるでしょう。
また、トイレットペーパーがあれば、ティッシュペーパーやペーパータオルの代替品として活用できるので、この点でも災害時用に備蓄するメリットがあると言えます。

特に250mのトイレットペーパーはおすすめとなります。まずは1ロール災害リュックに入れておきましょう。計算できる人は家族の人数を何日分用意するかまで決めて、備えておくとより安心できると思います。

 


湯浅紙店 監修

湯浅紙店を運営する株式会社ユアサのスタッフが監修しています。ユアサは創業大正14年。トイレットペーパーやティッシュペーパー、ポリ袋などの日用消耗品の卸売、販売の老舗企業です。特に、トイレットペーパーやティッシュペーパーなどの家庭紙製品については、日本国内の多数の製造工場の見学や、工場責任者との意見交換により、製品製造に関する知見を深めています。また、アンケートや訪問により特に企業の消耗品利用ニーズにも精通しています。

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